「Lost World」 ヴィデオ作品



自分の想像には有り得なかった日が突然やってくる。個人の思惑を超えた力によってハンマーが振り下ろ

された時、自分はどう対処し身構えるだろう。




磁場のように引き込まれ、この場所に足を踏み込んだ時、人気も無く荒廃した空気が漂う放置された家々

や通りは、尋常ならざる雰囲気を醸し出していた。新しく出来上りつつある街に抗うような光景の中、そこで

出会った人々の話す言葉から、彼等の置かれた状況へ関心が移っていく。

なぜ彼らは、この特異な環境の中に居続けるのだろうか?



その複雑な事情を垣間見た時、目の前にある光景の裏側にある混沌とした社会構造を覗いてしまう。彼ら

が居続ける理由、それはこの国が抱える権力構造の問題と繋がっていく。私は現場で観察を続けるが、個

人では対処不能な領域となることに躊躇する。しかし、この国の部外者である私へ、耳打ちするように訴える

人や彼等なりの主張を露にする人に、こちらの心も何か揺さ振られる。彼等の話しを聞き続ける事で、何か

立ち上がってくるものがあるだろうか?




彼等の行く末がどのように展開していくのか、彼等自身にも定かではない。たとえ理不尽に日常を急襲され

たとしても、人々の生活や人生は続いていく。だから、生きて行く糧に等しい拠り所となるものを求め、彼等

なりのストーリーを作り出し、そのシナリオへ向けて決着を付けようとする。




たまたま出会った私へ、その物語を語る。ある老夫婦は現代より毛沢東時代を礼賛しながらも、新しい生活

に期待を寄せる。また、北京中心街から紆余曲折の末この村へ辿り着いた画家は、終の棲家さえ追われて

いる状況を、昔日の詩人、陶淵明に自らをなぞり、淡々と制作の日々へ没頭していく。


それらストーリーの断片は、この場所を偶然訪れるようになったこちら側と共振し、私なりに垣間見た物語を

展開していく事となった。








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