「Lost World」 「Reflector」
これらの写真作品は、私が最初に現場へ訪れた時に受けた強い印象を、かたちに表したものとも言える。
辺りは再開発の造成のため、今まであった集落の面影や住民達の影もほとんど見当たらず、無機質な
更地が広がっている。荒野のようなエリアに残っていたこの村は、取り壊されつつある伝統的な四合院造
りの家内から、僅かながら人の気配が漂っていた。彼らの生活の営みが細々とでも垣間見れる状況に、
私は興味を持つ。まるでこの村が、荒地の中に傷つきながらも瀕死の状態で生き残った生命体のように
思えたのだ。
ほとんどがレンガ造りの家々は、取り壊されると粉々に崩落し、村のほとんどはまるで遺跡のような光景と
なっていた。その瓦礫の中には、僅かに残った住民達が踏みしめて作った、けもの道のような通りができ
ている。私はその道に沿って巡り歩き撮影を行った。「Lost World」は、それらの写真画像を組み合わせ
構成し、作品へと仕上げたものだ。混沌とした現場を表わすように、写真は複数点重られ錯綜したものと
なるが、モノクロ画像で過剰さが抑えられ、あらたに作り出された光景が立ち現れる。
そして「Reflector」。始めて訪れた時のエリアの崩壊の広さに驚き、レンズのフレームに収まりきれないその
光景に対して講じた策により生み出される。その場に鏡を置き、そこへ周りの風景を写し込みファインダー
を覗き直すと、フレーム内には奥行きのある重層的な光景が現れた。
写真を一面的に見せるだけではない方式は、「Lost World」「Reflector」共に同じコンセプトである。複雑な
現場の有様を、複数の要素で構成する事によって表現していく。今回のやり方は、現場の印象からインスパ
イアされ、制作へと結び付いた。