「Untitled」 「Untitled-Transform」
私達の対面する人々は、目の前に存在しているが、どんな確かなイメージを掴んでいるだろうか。
そもそも人に対して定まったイメージを求めることは、ほぼ無意味な思い過ごしで終わるのではないだろ
うか。私達は日々、様々な人達とすれ違いながら、様々な思いを抱きつつ活動している。そんな錯綜した
空間の中にいる人々のポートレイトを試みたのが、このシリーズだ。
この作品のモデルは、日本の大手企業に勤務する方々で、彼らのポートレイトを彼らの職場で撮影した。
さらに、そのポートレイト写真に、透明なアクリル・キューブを組み合わせて再び撮影し、この作品となった。
硬質で微妙に積み重なったテクスチャーは、都市で活動している人々の間に存在する、様々な要素の
象徴として演出した。
そのテクスチャーを通して見えてくる彼女達は、偶然生まれた歪みや反射の効果で元とは違う表情を見
せ、一人の人間が持っている複雑で多面的な内面性が現れたかのようだ。また、断片(ビット)の積み重
なりは、その人のキャラクターの様々な要素でもあり、人物と背景の境界が曖昧となるイメージは、彼女達
が周りの環境の中に順応し拡散していく姿に見える。まるで、二次元の媒体に三次元的イメージを取り込
んだキュビズムのように、複雑に錯綜するイメージは、対象を多面的に捉えていく。
「Transform」シリーズ は、一人のポートレイトが、一つのイメージだけではない事を模索した。
一つのポートレイトを、日時を変えてアクリル・キューブを積み変え、何回か撮影する。自然光のみの撮影
なので、天候や時間による光や色調の影響も加わる。元は一つのポートレイトだが、それに微妙な変化を
加える事で、面差しは変貌し増殖していく。その変わりゆく姿は、刻々と変化する人間の感情のようでもあり、
対面する人への印象が時間の経過によって変貌していく様子にも見えてくる。
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