「Tokyo Mid」

一人の女性が街の中に佇んでいる。私たちのひとりとして彼女は登場する。
人の流れの多い交差点、ビルや地下鉄への入り口など、誰もが行き交う場所に現れる。

とめどなく脈動を続ける街の中に通低する、新しく杭を打ち込む音や鉄骨がぶつかり合う音などが、また
胎動を始めた新規のリズムを生み出していく。
確実に増え続けるそのリズムは、高楼の間に響き渡る。

何百年も前からこの場に在って、長く此処を見続けてきた運河は、まるでこの街の背骨のように、静かな
存在感を留めている。
ここでの中枢機能のために、効率よく流動する人々の中、少しの時さえ留まる者は異邦人のよう。

私はこの流れの中に、ちょっと違うリズムを持ち込みたいと考えた。この場所にその異邦人の存在を置き、街に紛れ込ませることを。
黄昏の時間帯、あまり目立ち過ぎず、日の明るさが変化する頃に彼女を登場させる。経過によって漂う時
の流れが見え、私達を取り巻く自然の営みが感じられる1日のうちの僅かな時間、逢う魔が時。

整然とした町並みに佇んだ彼女は、この場所の機能から外れた存在に見える。
目の前を通る人々に対して関心があるようでも無く、何か仕掛ける訳でも無く、ただ束の間、彼女の周り
に隙間が生じる。
たった一人の存在によって、秩序よく構成されたこの空間で、不意打ちのドラマが露わとなる。





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